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前歯をインプラントにするメリット・デメリットと治療の流れ

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前歯をインプラントにするメリット・デメリットと治療の流れ

前歯をインプラントにしたいと考えている方に向けて、メリットとデメリット、費用相場などについて解説します。

前歯は笑ったときや会話をしたときに、一番に目につく部分です。そのため歯が失われてしまったとき、できる限り見た目が美しい方法で義歯を…と考える方が多いでしょう。

インプラントは天然歯と遜色のない仕上がりになりますが、前歯のインプラントは難易度が高いとされています。今回の記事では前歯インプラントのメリットやデメリット、費用相場について解説します。読んでいただければ前歯をインプラントにするべきかどうか、判断する材料となるはずです。

インプラントとはそもそもどんなもの?

インプラントとは、体に装着または埋入する人工的な部品のことです。
体の中に埋め込むものとしては、心臓ペースメーカーや豊胸術に用いられるシリコン、人工関節などが該当します。

歯科では、天然の歯や歯根の代わりに埋め込む部品をインプラント(デンタルインプラント)と呼んでいます。

デンタルインプラントの仕組み

デンタルインプラントは、歯根の上に被せものとして歯の形をした人工歯を取り付けて使用するものです。

【デンタルインプラントの構造】

  • 上部構造(被せもの):歯の代わりに機能する人工歯
  • アバットメント:上部構造とフィクスチャーを結合させる部品
  • フィクスチャー(インプラント体):歯根の代わりに土台となる部分

はじめに歯根の代わりをするフィクスチャーを顎の骨に埋め込み、骨と結合させてからアバットメントを上に取り付けます。

アバットメントの上に上部構造をかぶせて、傷口が治癒すればデンタルインプラントの完成です。

関連記事:インプラントとは?概要・メリットデメリット・リスクなどの基礎知識

前歯のインプラントが難しいと言われる理由

前歯のデンタルインプラントは、3段階ある難易度のうち2に相当するといわれています。

なぜ難易度が高いのか、3つの理由をみていきましょう。

理由①:顎の骨が薄いため

歯と歯茎を支える顎の骨は、生まれつき個人差があります。
さらに年齢を重ねてくると骨量が減り、歯周病によって骨の吸収が起こるために、骨が薄くなるケースもみられます。
顎の骨が十分になければ、インプラントの埋入は行えません。

骨量を増やすために骨造成や骨移植の治療が必要ですが、骨量を増やす治療によって合併症が起きるリスクも考えられるため、全体的に治療の難易度が高いといわれているのです。

理由②:審美性が必要であるため

前歯は口を開けたり笑ったりしたときに目につきやすく、奥歯以上に審美性が求められる部位です。

隣り合う前歯や犬歯と違和感がないこと、歯茎の形や歯の色に差がなくインプラントの接合部が見えないようにするなどのポイントをクリアしなければなりません。

自然な歯に見せるための技術力が求められ、歯としての機能もしっかりと満たさなくてはならないため、装着から仕上げまでが難しい部位でもあります。

理由③:歯肉の移植が難しいため

審美性が求められる前歯部分は、骨だけではなく歯肉がインプラントの埋入に十分ではない場合もあります。

歯周病にかかると、歯茎は炎症などを繰り返して少しずつ破壊されていき、歯の根元のほうへ下がっていきます。
歯肉退縮と呼ばれる現象ですが、歯周病以外にも歯の磨きすぎや加齢によって起こることもあります。
歯肉退縮を起こしている部位は、新しい歯肉を別の場所から移植しなければなりません。
インプラントを入れると、歯のまわりをきちんと取り巻いて支えきれず、脱落のおそれがあるためです。

インプラント治療の前に骨造成と歯肉移植を同時に施すようなケースでは、手術と治癒までに一定の期間が必要になるため、難易度が高くなります。

理由④:付帯手術が多いため

前歯のインプラント治療では、骨と歯肉が十分になければ骨造成や歯肉移植といった付帯手術が必要になります。

歯並びが悪い方は抜歯や歯列矯正を行ってからインプラント治療を検討するなど、手術以外の治療を実施するケースもあります(患者様ごとに異なるため、主治医とご相談ください)。

個人差はありますが、美しい前歯を手に入れる前に付帯的な治療を複数実施しなければならないケースでは、治療全体の難易度も高くなります。
全体の治療期間が中長期になること、通院回数や費用面の負担が大きくなる点をしっかりと考慮しなければなりません。

前歯のインプラントをするメリット

前歯のインプラント治療は難易度が高めといわれていますが、前歯の機能を取り戻すことで、次のようなメリットが期待できます。

【前歯のインプラントのメリット】

  • 自然な見た目になる
  • 他の歯を削る必要がない
  • 天然歯と同等の咀嚼力
  • 発音しやすくなる
  • 長期間使用できる

メリット①:自然な見た目になる

インプラントは歯根の代わりをする部分で、その上に人工歯をかぶせて歯の機能を取り戻す治療です。

インプラント本体は歯肉の奥、顎にしっかりと埋め込まれて固定され、人目に触れる心配はありません。

ブリッジや差し歯は経年劣化で外れてしまったり、天然歯と色味の違いが出たりといったデメリットがありますが、被せものは天然歯と同じ色や質感のセラミック素材で作られ、元の歯と遜色のない仕上がりが期待できます。

メリット②:他の歯を削る必要がない

インプラント治療ではブリッジのように、失った歯の両隣を削る必要はありません。

ブリッジは義歯をそのまま装着できないため、隣り合う歯を削ってから部品を装着します。

一方、インプラントは顎の骨の中に歯根の代わりをする部品を埋め込んで使えるため、単独で歯として自立し、健康な歯もそのまま残しておけます。

前歯は人目につきやすい部分のため、できるかぎり健康な歯を削りたくない場所でもあります。

そのため、埋め込んで使えるインプラントが適しているのです。

メリット③:天然歯と同等の咀嚼力

ものをしっかりと噛むことは、顎や舌を鍛えてお口の中の機能を維持します。

普段からきちんと噛むように心掛けたいところですが、入れ歯やブリッジは天然歯よりも咀嚼力が得られない問題がありました。

インプラントは歯根から骨と結合させるため、天然の歯に近い咀嚼力が得られます。

骨は咀嚼によって力(刺激)が伝わることで発達するため、入れ歯のように骨が痩せていくリスクを抑えやすい点もメリットといえるでしょう。

メリット④:発音しやすくなる

入れ歯は途中で外れてしまうリスクがあり、食事や会話がうまく楽しめないといったデメリットがあります。

一方、インプラントは顎に埋め込んで使う歯のため、天然歯と同じように使えます。

歯の位置関係が正しく、安定感がなければ発音のしづらさを感じます。

インプラントのように位置を定めて固定できる治療であれば、口の中の動きを妨げにくいため、天然の歯と同じように会話が楽しめます。

メリット⑤:長期間使用できる

入れ歯の寿命は約5年、ブリッジは約5〜10年(個人差があります)の寿命とされていますが、インプラントはメンテナンスをすれば10〜15年は機能するといわれており、他の治療方法と比べて寿命の長さがメリットです。

メンテナンスの質やお口の中の状態にもよりますが、正しく埋入してメンテナンスを続ければ、天然歯と同等の機能を長期的に使用し続けられます。

関連記事:インプラントの平均寿命は?寿命が短くなるNG行動と対処法も解説

前歯のインプラントをするデメリット

さまざまなメリットが期待できるインプラント治療ですが、前歯のインプラントにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

デメリット①:治療費

インプラント治療は外科手術をともなう治療であり、保険が適用されない自由診療のため、虫歯や入れ歯といった保険診療と比べて治療費が高額になります。

検査から治療完了までには数十万円の費用がかかる点を考慮しなければなりません。

関連記事:インプラントの費用相場

デメリット②:インプラントの接合部が見えてしまう

前歯にインプラントを埋め込んだとき、骨量が十分になかったり歯肉退縮が起きたりすると、インプラントと上部構造をつないでいるアバットメントが歯茎のすき間から見えてしまう場合があります。

笑ったときに歯と歯茎の間に金属が見え隠れすると、見た目にあまり美しい状態とはいえないため、審美的な問題が生じます。

デメリット③:メンテナンスが必要

インプラントは埋め込んで終わりではなく、継続的にメンテナンスをしなければなりません。
特に、歯周病にかかったことがある方や高齢の方は、お口の中全体のクリーニングや点検とあわせてインプラントのチェックが必要です。

定期検診は1ヶ月に1回程度のペースで問題ありませんが、家庭や仕事といった事情で通院が難しい方にとってはデメリットに感じられるかもしれません。

関連記事:インプラントのメンテナンスが必要な理由は?費用の目安や寿命を伸ばすために心がけたいこと

前歯のインプラント治療の流れ

インプラント治療は自由診療のため、事前にカウンセリングと検査を行って治療計画を作成し、治療に入ります。

前歯のインプラント治療の流れは次のとおりです。

【治療の流れ】

  • カウンセリング
  • 術前検査
  • 治療計画
  • 一次手術
  • 治癒期間
  • 二次手術
  • 治癒期間
  • 型取り
  • 被せもの作製
  • 完成
  • アフターケア

インプラント治療は部位にかかわらず、カウンセリングで費用や部位に関する相談を行ってから術前検査を実施します。
目視ではわからないお口の中の状態を細かく確認し、インプラントの埋入に適しているかを判断するためです。

次に、治療計画に入ります。骨造成や歯肉移植、矯正治療が必要な方については、治療計画の段階で医師が説明を行います。
費用や治療期間などに都合がつかなければ契約を見送るか、別の治療を計画しましょう。
医師の方針と患者様の意向が合えば、契約を行って本格的に治療が始まります。

手術は一般的に2回法と呼ばれる方法で行います。

1回法と2回法を提供しているクリニックもありますが、お口の中の状態や患者様の希望、医師の治療方針によって異なるため、事前によく話し合って検討してください。
2回法では、一次手術としてインプラントを顎の骨に埋め込んでから2~6ヶ月の治癒期間をおき、インプラントと顎の骨が結合するのを待ちます。

インプラントと顎の骨が結合したら、二次手術として歯肉を切開し、インプラントにアバットメントを装着します。
ここで型取りを行って上部構造(歯の部分)を製作します。傷口が治癒するのを待って、完成した上部構造を装着すれば治療完了です。

すべてのインプラント治療が終わったあとは、定期検診でお口の中のクリーニングや人工歯の管理を行います。
メンテナンスとも呼ばれますが、1ヶ月に1回程度の間隔で歯科医院を訪れ、お口の中を確認することが大切です。

前歯のインプラントの費用相場

前歯のインプラントにかかる費用は、1本あたり30万円からが平均的な相場です。

費用には検査や治療計画、手術や処置費用などがすべて含まれていますが、自由診療のため歯科医院ごとに料金が異なります。
手術にかかる費用がもっとも高額になりますが、高品質な素材のインプラントを使用する場合は、インプラントの費用も高額になります。

インプラントの料金は素材とメーカーによって変わるため、選択肢が複数あることで治療の幅が広がります。
治療を検討するときは、いくつかのインプラントメーカーや歯科医院ごとの料金などを比較してみてください。

歯科医院によって手術や治療の費用が異なる点にも注意し、複数の医院でカウンセリングを受けるなどして、料金を比較することをおすすめします。

インプラント以外の治療法

失った歯を取り戻す治療には、ブリッジや入れ歯が挙げられます。

インプラントとあわせて治療方法の違いをみていきましょう。

【インプラント以外の治療法】

治療名 特徴
インプラント 歯根のあった場所にインプラントを埋め込み、上部構造をかぶせて1本の歯にする治療方法
ブリッジ 失った歯の両隣を削って被せものを取り付け、人工歯を支える治療方法
入れ歯 失った歯の両隣を削って留め金を取り付け、人工歯を支える治療方法

欠損した歯を保険診療で治す場合、健康な歯を削らなくてはなりません。
しかし、天然歯は削られることで虫歯にかかりやすくなったり、歯としての強度を失ったりします。

インプラントはどの歯も削る必要がなく、1本の歯として独立して使えます。
健康な組織をそのまま保持し、負担をかけない治療方法なのです。

インプラント以外の治療法①ブリッジ

ブリッジとは、欠損している歯の両隣にある歯を削って、上から被せものをして中央の欠損部分を補う治療方法です。

入れ歯のように留め金ではなく被せものとして歯を支えるため、中央にある人工歯を健康な歯で支えることができます。

注意点として、両隣に健康な歯がない場合は治療ができません。両隣のどちらか、または両方とも動揺や虫歯による欠けがある場合も、ブリッジ治療は適用できません。

関連記事:インプラントかブリッジか?違いを徹底解説

インプラント以外の治療法②入れ歯

入れ歯とは、欠損している歯や歯茎などを補う人工物の総称です。

取り外しが可能な義歯であり、歯茎や顎の粘膜部分に「床(しょう)」と呼ばれるパーツをつけて、健康な歯に留め金をかけて人工歯を支えます。
パーツは一人ひとりのお口の状態にあわせて作られるため、オーダーメイドの治療が可能です。
ただし、留め金をかける歯に負担がかかるほか、天然歯の20%ほどの噛み心地にとどまる点がデメリットです。

関連記事:インプラントと入れ歯を併用した治療法とかかる費用の目安

前歯のインプラントは経験豊富な歯科医院を選んで

今回は、前歯のインプラント治療について他の治療方法とともに紹介しました。
インプラントは周囲の歯を削らなくても装着できます。
見えやすい前歯をインプラントにすることには、審美性においてメリットがあると言えるでしょう。

しかし、骨の量によっては接合部が見えてしまい、反対に審美性が損なわれてしまうことも考えられます。

審美性と機能性を損なわずにインプラント治療を受けるためには、経験豊富な歯科医院を選びましょう。

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