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歯が抜けたまま放置することのリスクと具体的な3つの治療について
歯が抜けた状態を放置している方に向けて、歯が失われることのリスクと、治療の際の3つの方法についてご紹介します。
何らかの原因で歯が抜けてしまうと、「どうしよう?」と、その後の対応に迷われるのではないでしょうか。中にはそのままにしておいても良いのでは…と思われる方もいるかもしれません。
しかし歯が抜けた状態を放置することには、さまざまなリスクがあります。今回の記事では放置することのリスクと、歯が抜けた際の治療方法について解説。参考にしていただければ、今後どのような対応をするべきかおわかりいただけるはずです。
歯が抜けた・失ったままの状態を放置するリスク
歯が抜けたまま放置すると様々なリスクがあります。
歯を失ったままにすることへの4種類のリスクについてご紹介します。
機能面に対する影響
まずは口の機能面に関する影響から解説します。
【機能面への影響】
- 食べものが噛みにくくなる
- 虫歯になりやすくなる
- 歯周病になりやすくなる
- 口臭が強くなる
- 歯が折れる可能性が高まる
歯の機能面から考えると、まずは食べものが噛みにくくなるリスクがあげられます。
食事は毎日3回行うことですから、咀嚼しにくいことは大きなストレスにもなるでしょう。
また虫歯や歯周病になりやすくなったり、口臭が強くなったりすることもあります。
そのため健康な歯にまで悪影響が及び、さらに歯が抜けてしまうこともあるかもしれません。
歯が抜けたまま放置していると、歯として重要な「機能面」に対して、大きな影響が与えられることがあります。
生活に対する影響
歯が失われたままだと、機能面だけでなく全身に影響が及ぼされることも珍しくありません。
【生活への影響】
- 認知症発症のリスクが高まる
- 糖尿病・高血圧のリスクが高まる
- 胃腸が悪くなりやすくなる
- 咀嚼力が低くなりストレスを感じやすくなる
- 慢性的な肩こり・腰痛のリスクが上がる
- 発音に支障が出る
歯は1本失われただけで、生活全般に影響を及ぼすようになります。
脳への刺激が少なくなることで認知症のリスクが高まったり、摂取できる栄養素の偏りによって糖尿病や高血圧のリスクが高まったりするでしょう。
また咀嚼が十分にできないことで胃腸への負担が増加する、セロトニンの分泌不足によりストレスを感じやすくなるなどの影響も考えられます。
セロトニンは幸福感を与えるホルモンで、咀嚼により分泌が増えるとされているためです[1]。
また肩こりや腰痛のリスクが高まるとも言われており、歯がないことによる発音への支障も懸念されます。
歯が抜けたまま放置すると、生活全般に対してさまざまな影響が及ぶ可能性があるでしょう。
見た目に対する影響
生活や機能面だけでなく、見た目に対する影響も心配されます。
【見た目への影響】
- 歯並びが悪くなる
- 顔の形がいびつになる
- 老けて見られる
- 歯茎の位置が下がり歯が多く見える
歯が抜けた状態で放置すると、健康な歯が徐々に歯がない場所に移動してくることがあります。そのため歯並びが悪くなってしまい、その影響で顔の形まで変わることも考えられるでしょう。
また咀嚼のしにくさによって表情筋が衰え、老けた印象になることも。歯が失われた状態が長く続くと、歯の骨が溶解されて歯茎が下がり、歯が多く見えるようにもなります。
歯が失われることにより、顔の印象が大きく変わってしまうこともあるかもしれません。
その他の影響
歯が失われると機能面・生活面・見た目とさまざまなところに影響が及びますが、放置すると治療面にも影響が及ぼされることが多くなります。
【その他への影響】
- 治療費が高額となる
- 治療期間が長期化する
歯が抜けた状態を放置すると、治そうとしたときに治療費が高額となります。
治療の時点で歯並びが悪くなっている可能性があること、顎の骨が少なくなり、歯茎が下がっている可能性が高いことが原因です。
すぐに治療を行えば、義歯を装着するだけで完了します。しかし長期間ほうっておくと、さまざまな影響により義歯装着前の治療が必要となるかもしれません。
治療の工数が増えると、料金が高くなるだけでなく、治療期間の長期化にもつながります。効率的に治療を進めるためにも、歯が抜けた状態は放置するべきではありません。
歯が抜けた・失った状態に対する治療法
それでは歯が抜けたり、歯を失ったりしたときには、どのような治療が行われるのかご紹介します。
主に行われる治療法は、「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」のいずれかです。
インプラント
歯が失われたときの治療法として第一にあげられるのが「インプラント」です。
治療の特徴や費用についてまとめました。
治療内容 | 顎の骨に穴を開けて、義歯を差し込み固定する治療 |
治療の特徴 | 審美性・機能性に優れており、天然歯に最も近い感覚で使える |
メリット |
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デメリット |
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費用目安 | 1本あたり33万円~40万円[2] |
インプラントの強みは、顎の骨に挿入した義歯が、骨に癒着することによりまるで天然歯のような使い勝手を実現できることです。
そのため咀嚼力や発音、見た目も義歯とは思えない機能性を誇ります。また健康な歯に影響を与えないこともメリットのひとつです。
しかし治療費用は高額であり、「骨に穴を開ける」という外科的治療が必要となることがデメリットと言えるでしょう。
糖尿病などの持病を持っている方や、体力の低い方は治療が受けられない可能性もあります。
ただし審美性・機能性に優れる義歯を求めるのであれば、インプラントは最も良い選択です。
ブリッジ
続いてご紹介する治療法は、両隣の歯を支えにして義歯を入れる「ブリッジ」です。ブリッジの特徴についても見ていきましょう。
治療内容 | 両側の歯にワイヤーをかけて義歯を設置する治療 |
治療の特徴 | 治療の費用が安く、治療期間も短いため手軽に受けられる |
メリット |
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デメリット |
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費用目安 | 20,000~30,000円 |
ブリッジは残っている両隣の歯にワイヤーをかけ、義歯を支えさせる治療法です。
そのため両隣の歯に負担がかかりやすく、天然歯の寿命を縮めるかもしれません。
また健康な歯を削らなければならないこともあります。
削ることにより、虫歯のリスクが高まることもあるでしょう。
しかし保険適用の治療となるため、治療費用が安いことが魅力です。
外科的手術も不要で、治療期間が短いこともメリットと言えます。
インプラントと比べると寿命は短いものの、入れ歯よりも咀嚼力・使い勝手ともに上です。
機能性を重視しながらも、費用や治療期間を抑えたいなら、ブリッジの選択をおすすめします。
関連記事:インプラントかブリッジか?違いを徹底解説
入れ歯
歯が抜けたときの治療方法として一般的なのが「入れ歯」です。
入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯がありますが、一部の歯が抜けたと仮定して、部分入れ歯について特徴をまとめてみました。
治療内容 | 歯と歯茎をかたどった被せ物を作り、残っている歯にかけて装着する治療 |
治療の特徴 | 最も手軽な治療法であるものの、機能面や審美性では劣る |
メリット |
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デメリット |
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費用目安 | 1本あたり約3,000円 |
部分入れ歯は歯を失った際に歯科医院に行ったとき、多くのケースで最初に提案される治療法です。
保険適用であり治療費用が抑えられること、治療期間が短いこと、手軽であることから広く利用されています。
インプラント治療は専門のクリニックでなければ治療が難しいことがあるでしょう。
入れ歯ではほとんどの歯科医院で対応可能で、手軽さでは非常に優れています。
しかし咀嚼や発音に違和感を抱くことが多く、インプラントやブリッジよりも寿命が短いことがデメリットです。
また審美性でも劣り、健康な歯を支持力とすることから他の歯への影響も懸念されます。
機能性や審美性より手軽さを重視するのであれば、入れ歯は良い選択となるかもしれません。
関連記事:インプラントと入れ歯を併用した治療法とかかる費用の目安
歯が抜けた状態を放置するとさまざまなリスクが
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、歯が抜けた状態を放置するリスクと、その際の治療法についてご理解いただけたと思います。
歯が失われた状態が長く続くと、機能面だけでなく生活面や見た目への影響が出てこないとも限りません。インプラント・ブリッジ・入れ歯の、いずれかの治療を早めに行いましょう。
[1]参照:JSTAGE:(PDF)咀嚼運動が重心動揺と気分状態へ及ぼす影響
[2]竹本和代ほか著. 「いい歯科医インプラント治療医」を選ぶ!2013. 朝日新聞出版社 2013; 188
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