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インプラントの構造・種類と各パーツに用いられる素材
インプラント治療では、顎の骨にインプラント体を埋入します。治療前にインプラントの構造を理解しておきたいと考える方は多いでしょう。
ここでは、インプラントの構造、種類、素材などを詳しく解説しています。以下の情報を参考にすることで、インプラントについて理解を深められるはずです。
また、自分に合っている治療法を選びやすくなることも考えられます。
治療を検討するにあたり、理解を深めたい方は参考にしてください。
目次
インプラント治療とは
インプラント治療は、入れ歯・ブリッジと並ぶ失った歯の治療法です。
具体的には、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、ここに人工歯などを取り付ける治療法を指します。主なメリットは、自然歯と同じように噛めることです。
硬いものや熱いものでも、これまで通り噛める傾向があります。自然な見た目を実現しやすい点も魅力といえるでしょう。
天然歯とよく似た構造をしているうえ、セラミックを用いた被せものを主に使用するため美しい仕上がりになります。
これらのほかにも、周囲の健康な歯に影響を与えない、寿命が長いなど、さまざまな強みがあります。
ただし、デメリットがないわけではありません。理解しておきたいポイントとして、治療期間が長くなりやすい、基本的に保険を適用できないなどがあげられます。
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インプラントの構造
インプラントは以下のパーツで構成されます。
【基本構造】
- インプラント体(人工歯根)
- アバットメント(土台)
- 上部構造(人工歯)
それぞれの概要を解説します。
インプラント体(人工歯根)
顎の骨に埋め込むパーツです。この特徴から人工歯根とも呼ばれます。歯根は歯茎に覆われて見えない部分です。顎の骨と結合して歯を支える役割を担います。
インプラント体のサイズは、直径4mm前後、長さ10mm前後が一般的といえるでしょう。実際に使用するサイズは、埋入する部位や顎の状態などで決定します。
つまり、インプラント体のサイズは患者様で異なります。
アバットメント(土台)
インプラント体の上に取り付けるパーツです。この後に説明する上部構造を支える土台になります。
簡単に説明すると、インプラント体と上部構造を接続するパーツといえるでしょう。
また、アバットメントは、口腔内の状況にあわせて高さ・角度などを調節する役割も担います。
上部構造(人工歯)
アバットメントの上に取り付けるパーツです。いわゆる「被せもの」にあたります。
つまり、失った歯の代わりになるパーツといえるでしょう。
口腔内で露出しているため、機能性だけでなく審美性も重視されます。丈夫なことはもちろん、周囲の歯と馴染む美しい上部構造を用いるケースがほとんどです。
インプラントの種類
インプラントは構造によりワンピースタイプとツーピースタイプにわかれます。
それぞれの概要は次の通りです。
ワンピースタイプ
インプラント体とアバットメントがひとつのピース(最初から結合)になっているタイプです。手術を1回だけする1回法で用いられます。
主なメリットは、治療期間が短いことと身体にかかる負担が少ないことです。パーツが少ないため、費用も割安になる傾向があります。
ただし、顎の骨に一定の厚みを求められます。希望すれば誰でも受けられるわけではありません。埋め込み角度が上部構造に影響を与える点にも注意が必要です。
また、アバットメントに不具合が生じると、インプラント体ごと交換しなければなりません。メリット・デメリットを理解したうえで選択したいタイプと考えられます。
ツーピースタイプ
インプラント体とアバットメントが別々になっているタイプです。2回にわけて手術を行う2回法が原則となります(インプラント体を顎の骨に埋入するとき・インプラント体にアバットメントを取り付けるとき)。
治療期間が長くなる点、身体にかかる負担が大きい点はデメリットといえるでしょう。パーツが多いため、費用も割高になる傾向があります。
しかし、顎の骨が少ないケースや持病があるケースにも対応しています(対応可否はケースで異なります)。
また、衝撃を受けてアバットメントのネジが折れても結合部にダメージが加わりにくい、アバットメントに不具合が生じたときにインプラント体を残せるなどの強みもあります。
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インプラント体の種類
形状によりスクリュータイプとシリンダータイプにわかれます。
それぞれの概要は次の通りです。
スクリュータイプ
ネジ状になっているインプラント体です。先端に向けて徐々に細くなっているルートタイプと太さが均一のストレートタイプにわかれます。
壁などへネジを打ち込むように顎の骨へ埋入します。表面にネジ山を設けて骨と接する面積を大きくしていることが特徴です。
これにより、初期固定(埋入時に骨に固定されること)を得やすいとされています。
また、噛む力を分散させやすい点もスクリュータイプの魅力です。以上の特徴を備えるため、スクリュータイプはインプラント体の第一選択肢になっています。
シリンダータイプ
円筒形をしたインプラント体です。表面は滑らかで、ネジ山は設けられていません。
ハンマーで叩いて顎の骨へ埋入します。したがって、埋入そのものは簡単です。
ただし、表面積が小さいため、スクリュータイプよりも初期固定を得にくい傾向があります。
また、手術を2回にわけて行うため、心身にかかる負担は大きくなります。スクリュータイプよりも使用頻度は少ないですが、主流となっているインプラント体のひとつです。
インプラント体の表面加工の種類
インプラント体の表面加工にもいくつかの種類があります。
主な種類は次の通りです。
- サンドブラスト
- ハイドロキシアパタイト
- 酸エッチング
- 機械研磨
多く用いられている表面処理としてサンドブラストがあげられます。チタン表面の酸化膜を取り除き、骨と結合しやすくする点が特徴です。
ハイドロキシアパタイトは、骨の成分でコーティングする表面加工です。主な目的は、骨の回復を促すことといえるでしょう。
酸エッチングは塩酸などを用いて粗面を作る表面加工、機械研磨は機械で表面を滑らかにする表面加工です。
インプラントの素材の種類
インプラントにはさまざまな素材が用いられています。
パーツ別に用いられている主な素材は次の通りです。
インプラント体に使われる素材
インプラント体には、主にチタンが用いられています。チタンの特徴は、金属アレルギーを起こしにくいことです。ほとんどのケースで安全に使用できます。軽量で強度に優れる点も魅力です。
鉄の6割程度の重量で、鉄の2倍程度の強度があります。顎の骨へ埋め込んでも違和感を抱くことが少なく、強い負荷がかかってもトラブルを起こしにくいと考えられます。
以上に加え、顎の骨と結合する点もポイントです。インプラント体に適した素材といえるでしょう。
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アバットメントに使われる素材
アバットメントには、主にチタン、ジルコニアなどが用いられています。
インプラント体と同じ素材を用いることもあれば別の素材を用いることもあります。チタンのメリットは前述の通りです。
ただし、アバットメントに用いる場合、露出する恐れに注意しなければなりません。
金属部分が見えると、見た目が悪くなってしまいます。
この点を解決できる素材としてジルコニアがあげられます。白いため露出しても目立ちません。金属アレルギーを起こさない点も魅力です。
ただし、歯よりも硬いため、顎の骨や周囲の歯に負担をかける恐れがあります。
上部構造に使われる素材
上部構造にはジルコニアセラミック、オールセラミック、ハイブリッドセラミックなどが用いられています。
ジルコニアセラミックはジルコニアをセラミックで覆った上部構造です。強度・美しさ・安全性を兼ね備えた素材といえるでしょう。
ただし、費用は高額になります。オールセラミックはセラミックだけで作られた上部構造です。
天然歯に近い美しさを再現できます。ただし、強い衝撃が加わると割れる恐れがあります。
ジルコニアセラミックほどではありませんが、費用が高額になる点にも注意が必要です。ハイブリッドセラミックは、セラミックとレジンを使用している上部構造です。費用は割安になりますが、他の上部構造ほどの強度はだせません。また、審美性もやや劣ります。
インプラントの素材が豊富な理由
以上の通り、インプラントにはさまざまな素材が用いられています。
理由のひとつとして、安全性の確保があげられます。
例えば、選択肢が特定の金属に限られていると、金属アレルギーを起こす方は治療を受けられません。このようなトラブルを防ぐため、さまざまな素材を用いているのです。
また、コスト面への配慮も考えられます。基本的に保険を適用できないため、インプラント治療の治療費は高額になります。
複数の選択肢を設けることで、予算に合わせた治療を実現していると考えられます。
治療前にインプラントの構造を理解しておきましょう
ここでは、インプラントの構造と種類などについて解説しました。
インプラントは、インプラント体・アバットメント・上部構造で構成されます。
各パーツにはさまざまな選択肢があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、重視したいポイントを明確にしてから選択することが重要です。
例えば、審美性を重視したい方はジルコニアセラミックの上部構造、費用を押さえたい方はハイブリッドセラミックの上部構造が向いていると考えられます。
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