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インプラントの骨造成手術における3つの術式とメリット・デメリット
インプラント治療を受けたいと考えている方に向けて、骨造成手術について解説します。
インプラントにしたいと歯科医院に相談したところ、「骨造成」が必要だと言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしくは、骨の量が足りないから治療ができないと言われた方もいるはずです。
今回は骨造成についてメリット・デメリットも含め詳しく解説する記事です。インプラント治療における骨造成の役割や必要性がおわかりいただける記事となっています。
骨造成とは
骨造成とは、骨の量を増やす治療のことです。インプラントは顎の骨にフィクスチャーと呼ばれる部品を埋め込みます。そのため骨の量が足りないと土台が突き抜けたり、はみ出たりしてしまったりすることがあります。
そこで足りない骨の量を補うために行われるのが骨造成手術です。骨造成を行ったうえで手術を実施すれば、術中・術後のトラブル回避に役立ちます。
以上のように骨造成とは骨の量を増やす治療のことであり、治療を安全に完了させるためにも必要なものです。
インプラント治療で骨造成が必要となる場合
骨量増加のための治療が必要となるのは次のような場合です。
【骨造成が必要なケース】
- 骨量が不足してフィクスチャーを支えられない場合
- 手術で他の組織を傷つける可能性が高い場合
- 美しく仕上がらないと思われる場合
代表的なのは骨量が不足していて、土台となる部品を支えきれないと判断された場合でしょう。治療を行うためには、一定量の骨量が必要です。フィクスチャーを支える周囲の骨は、2mm以上あることが理想とされます。埋入するフィクスチャーから計算して、2mmを確保できないと判断された場合に骨量増加のための治療を実施します。
またフィスクチャーを支えられるだけの骨の量が残っていたとしても、神経や血管を傷つける可能性がある場合も骨造成が必要です。その他、骨の高さがフィスクチャーの長さに足りない場合にも実施することがあります。骨の長さが足りないと接合部が見えてしまい、仕上がりが美しくならないためです。
以上の3つのケースにおいて、インプラント治療前に骨造成を行うことがあります。
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骨造成の種類
骨量増加のための治療には次のように3種類があります。
ソケットリフトの術式について
ソケットリフトとは、上顎の骨に高さが足りない場合に行う術式です。埋入する場所の上顎洞の1mm前まで穴を開けて、上顎洞を上に押すことで高さを確保します。
部品を埋め込むところと同じ部分に穴を開けるため、傷が小さく身体への負担がかかりにくいことがメリットです。また骨造成と同時に土台となる部品を埋入することが多く、治療期間が短く、患者様にとって負担の少ない方法と言えるでしょう。
しかし上顎以外には行えません。また上顎の高さが一定以下の場合は、次でご紹介するサイナスリフトにて対応します。
サイナスリフトの術式について
サイナスリフトも上顎の骨に高さが足りないときに実施される術式です。ソケットリフトとの違いは、治療前の骨の高さです。
上顎の骨の高さが6mm以上の場合はソケットリフトが採用され、6mmに満たない場合はサイナスリフトが採用されます。サイナスリフトでは歯肉を切開して、骨と粘膜を剥がした上で骨補填材を足します。
サイナスリフトは土台埋入と同時に行われることはほぼありません。骨造成の後、6か月ほどの期間をおいてから埋入するため、ソケットリフトより治療期間は長くなります。
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GBR法の術式について
GBR法は顎の骨の幅・高さともに足りない場合に実施される術式です。骨補填材や粉砕したご自身の骨を歯肉の中に入れることで、骨が再生されるように促す治療となります。骨を入れた部分には「メンブレン」と呼ばれる保護膜を設置し、骨芽細胞が増殖しやすい環境をつくります。
ご自身の骨を使用する場合には、下顎から骨を採取して、採取した骨を粉砕機にかけて細かく砕いて使用します。歯肉に骨を入れてから再生するまでには3~6か月が必要です。
そのため骨を多く増やさなければならない場合は、再生のため期間を待たなければなりません。しかし骨を増やす量がそれほど多くない場合は、土台の埋入と同時に行えます。
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骨造成のメリット
それではインプラント治療で骨造成を行うメリットについて見ていきましょう。
【メリット】
- 骨量の確保により手術の安全性が高まる
- 適切な位置に土台となる部品を埋め込める
- インプラントの寿命が長くなる
- 歯茎のバランスが良くなり見た目が美しくなる
骨量増加のための治療を行う最大のメリットは、骨量が確保できることで、手術の安全性が高まることです。十分な骨量があれば埋入した後に突き抜けたり、露出したりする可能性は低くなります。また適切な位置に埋め込めるようになるため、土台となる部品の安定性も高まるでしょう。
そして骨量が十分であることは、土台となる部品が脱落するリスクが低くなることでもあります。そのため治療結果が良くなることが多く、インプラントの長寿命化にも役立ちます。
その他、歯茎のバランスが良くなることなど、機能性・審美性の両方においてメリットを感じられるはずです。
骨造成のデメリット
骨造成手術にはメリットばかりではなく、次のようなデメリットもあります。
【デメリット】
- 治療が長期化する
- GBR法でご自身の骨を使う場合は採取の手術が必要となる
- 骨造成が難しいケースもある
術式によっては骨造成を行った後、半年程度の治癒期間が必要となることがあります。結果的に治療が長期化し、患者様が負担に感じることがあるのがデメリットです。またGBR法でご自身の骨を使用する場合は、下顎から骨を採取するための手術も必要となります。そのため身体への負担も増加するでしょう。
また骨造成は患者様の状態により、行えない場合があることもデメリットのひとつです。たとえば糖尿病などの全身疾患がある方や、喫煙者の方では手術後の治癒に問題が起こることがあります。そのため骨造成・インプラントともに治療が行えない可能性があることも知っておいてください。
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骨造成を含める際の治療期間
骨造成を含めた治療期間は、約12か月とされます。骨造成の術式や骨の再生状態により治療期間は変わりますが、骨の再生には6~10か月ほどかかるのが一般的です。
骨造成を行わない場合の治療期間は8か月が平均的なので、骨造成のために4ヶ月がかかることになります。
骨造成手術はインプラント治療の安全性・安定性を高める
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、インプラントにおける骨造成手術の必要性がご理解いただけたと思います。
骨の量が足りない場合、治療前の骨量増加のための治療は重要なものです。骨の量が十分であれば、土台となる部品を適切な位置に埋め込めるようになり、治療後の安定性も高まります。しかし骨造成をすることで治療が長期化すること、身体的負担が増える可能性があることも事実です。
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