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上顎へのインプラントで起こる危険性がある「上顎洞炎」の症状・原因
インプラント治療を受けたいと考えている方に向けて、上顎洞炎についてご紹介していきます。
「上顎へのインプラントは危険」との話を耳にしたことはありませんか?上顎のインプラントが危険だと言われるのは、「上顎洞炎」が引き起こされる可能性があるためでしょう。
今回の記事では上顎洞炎の症状や原因、治療法などについてまとめて解説いたします。上顎インプラントの危険性も知ったうえで治療を検討したいと思われているなら、ぜひ参考にしてください。
上顎洞炎とは何か
上顎洞炎とは上顎の上、鼻の奥あたりにある骨の空洞部分で起きる炎症です。
骨の空洞の部分を「上顎洞」と言います。内部はシュナイダー膜と呼ばれる粘膜で覆われており、粘膜に細菌が入り込むと上顎洞炎と呼ばれる炎症が起こります。
炎症をそのまま放置すると、眼窩内感染や髄膜炎、脳腫瘍へと発展しかねない恐ろしい病気です[1]。
ただし珍しい病気ではなく、ヨーロッパでは成人人口の約5~12%の方が上顎洞炎であるとの報告があります。
上顎洞は副鼻腔のひとつなので、副鼻腔炎と呼ばれることも少なくありません。
以上のように上顎洞炎とは、鼻の奥、上顎の奥にある骨の空洞で起こる炎症です。
上顎洞炎で現れる症状
上顎洞炎の症状は、鼻性か歯性かにより変わります。現れる症状について、鼻性・歯性と両方のケースについて見ていきましょう。
鼻性上顎洞炎の場合
鼻性の場合の主な症状は次のとおりです。
【症状】
- 鼻づまり
- 鼻水の変色
- 鼻の奥の違和感
- 目のだるさ・重さ
- 頭痛
まずは鼻づまりと、緑色や黄色の鼻水が出る症状が見られるようになります。変色した鼻水は上顎洞に溜まった膿が鼻から出てきたものです。
体の振動により鼻の奥の方に違和感を抱くようになったり、目がだるい、重いと感じられたりします。
同時に頭痛を感じる場合もあるでしょう。
鼻性上顎洞炎の症状は以上のように、鼻や目などに現れるのが特徴です。
歯性上顎洞炎の場合
それでは次に、歯性で見られる症状についてご紹介します。
【症状】
- 歯の痛み
- 歯の違和感
- 歯茎の腫れ・痛み
- 頬の痛み
歯性の炎症では歯に炎症が起きるため、痛みや歯が浮くような違和感が症状として起こります。また歯茎が腫れて痛みを感じることもあるでしょう。
ただし慢性化している場合は、痛みがないこともあります。
場合によっては鼻性での炎症と同じような症状を感じるでしょう。
歯性上顎洞炎は鼻性の場合の症状に加え、歯や歯茎への症状が現れます。
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上顎洞炎の原因は何か
それではなぜ炎症が引き起こされるのでしょうか?原因について鼻性・歯性・インプラントの3つを見ていきましょう。
鼻性上顎洞炎の場合
鼻性での炎症の原因は、風邪・インフルエンザ・アレルギー性鼻炎が代表的です。
風邪やインフルエンザにかかり鼻に炎症が生じると、副鼻腔まで炎症が広がり上顎洞炎になります。アレルギー性鼻炎の場合も同じで、鼻の炎症が長引くと引き起こされます。
以上のように鼻性上顎洞炎の場合は、風邪や鼻炎など、鼻の炎症から始まることがほとんどです。
歯性上顎洞炎の場合
歯性での炎症は歯の疾患が原因で引き起こされることが多くなっています。
虫歯になると神経が傷み、歯の根元に膿がたまることがあります。また歯周病では原因菌により歯を支えるための骨が溶かされてしまうことも。そのまま放置すると炎症が広がり、上顎洞に閉そくが起こることで症状が現れます。
副鼻腔炎のうち歯が原因であると考えられる症例は、40.6%とも72.6%とも言われており、非常に割合が多いです。
歯性では虫歯や歯周病など、一般的な口内の病気から引き起こされます。
インプラントによる上顎洞炎の場合
インプラント治療にも上顎洞炎発症の危険性があります。
上顎へのインプラント手術で粘膜に傷がついて、傷から侵入した細菌によって炎症が引き起こされるためです。もしくはインプラント治療がきっかけで他の歯に炎症性の症状が現れ、骨の空洞へと炎症が広がるケースもあります[2]。
インプラントによる上顎洞炎が起こりやすいのは、インプラント体の埋め込み手術と上顎洞底挙上術のときです[2]。
ただし上顎洞炎を引き起こす歯科治療はインプラントだけではありません。上顎奥歯の抜歯や根管治療でも骨の空洞の粘膜が傷つくことはあります。
インプラントの普及に伴い増えてきている症例ではありますが、インプラント以外でも起こり得る危険です。
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上顎洞炎の治療法を紹介
炎症を放置するとさらに症状が悪化してしまいます。治療法は次の3つが採用されることが多いため、治療法を知り、できる限り早めに治療を始めてください。
治療法1:薬物治療
ひとつめの治療方法は薬物治療です。炎症を抑えるためにマクロライド系・β-ラクタム系・キノロン系などの抗菌薬が用いられます[1]。重症であればβ-ラクタマーゼ阻害薬が配合された治療薬が選択されることもあるでしょう[1]。
抗菌薬による薬物治療は、次にご紹介する歯科治療や上顎洞根治手術と併用されます。
治療法2:歯科治療
虫歯や歯周病が原因である場合、薬物治療とともに歯科治療が行われます。病巣を除去するための治療なので、原因の歯は抜歯となることがほとんどです。ただし根管治療もしくは歯根端切除術のいずれかにて、抜かずに治せる場合もあります[1]。
しかし根管治療は長期的な成功率が低く、10~19年にわたる症例観察では79%ほどです。
また根管治療が難しい症例もあります。根管治療が難しいと判断されたときは、歯根端切除術が選択されるかもしれません[1]。
上顎洞炎の治療では、それぞれの方の状態にあわせた治療法を選択します。
治療法3:上顎洞根治手術
上顎洞根治手術とは上顎洞炎を手術にて治療する方法です。手術法としてはコールドウェルーラック法とデンカー法の2種類があります。
コールドウェルーラック法では歯肉を切開して上顎洞に穴を開け、粘膜を除去します。デンカー法は広い範囲で骨を削る手術法です。
以上のように根治手術にて治す方法もあります。
歯性上顎洞炎の方がインプラント治療を受ける際の注意点
歯性上顎洞炎の方がインプラント治療を受けたい場合には、2つの注意点があります。
【注意点】
- サイナスリフト治療が受けられない可能性があること
- 治療期間が長引きやすくなること
サイナスリフトとは骨の厚みを増すための治療ですが、炎症を患ったことのある方では受けられない可能性があります。また炎症を治療していない場合は、インプラントの治療期間が長引きやすくなることも知っておいてください。
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インプラントによる上顎洞炎の危険性は抑えられる
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、上顎洞炎についてご理解いただけたと思います。
上顎洞炎は虫歯や歯周病だけでなく、インプラント治療で起こる危険性もある疾患です。
治療中に粘膜に傷をつけなければ、発症の可能性は大幅に抑えられます。ただし炎症を患っていると治療期間が長くなるため、インプラントの前にまずは炎症を治療してください。
参照:JSTAGE:(PDF)インプラント治療による歯性上顎洞炎
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